この記事でわかること
1.銅とは
化学記号
Cu(ミネラルの一つ)
体内の存在場所
肝臓、骨、骨格筋、血液、腎臓、膵臓、毛髪など
体内存在量
約100mg
生理作用
鉄の吸収を助ける、活性酸素を除去するSOD(活性酸素に対抗する酵素)の構成成分
赤血球の赤い色素”ヘモグロビン”は鉄を成分としているが、ヘモグロビンを作るた目に鉄を必要な場所へ運ぶのが銅の役割の一つ。そのため、鉄が十分にあっても、銅がなければ鉄をうまく使うことができず貧血となることもある(銅欠乏性貧血)。
過剰症
特別な場合以外は過剰症はみられない
欠乏症
貧血、成長障害、毛髪異常
吸収排泄
食物から取り入れられた銅は腸から吸収され、アルブミンによって肝臓まで運ばれる。肝臓からセルロプラスミン(運搬役のタンパク質)によって全身へ運ばれる。胆汁酸によって排泄される。血液中約95%の銅がセルロプラスミンに結合していて、セルロプラスミンは女性ホルモンのエストロゲンと連動する性質があるため、女性の方が血清銅がやや高いと言われる。
2.銅とメンタルの関係
栄養とメンタルに関する研究で有名なウィリアム・ウォルシュ博士は、うつ症状のない女性と産後うつ症状のある女性の血液中の亜鉛と銅の数値を比較した場合、産後うつの女性の血清銅数値が優位に高かったと示しています*1。。また、犯罪を犯した統合失調症患者と犯罪を犯していない統合失調症患者の同亜鉛バランスを比較しても、犯罪歴のあるグループの血清亜鉛が低く、血清銅が優位に高いとの結果もあります*2。
なぜ、銅がメンタルに影響を及ぼすのか。女性ホルモンバランスの変動などにより、銅が増加するとMAO酵素が増えます。幸せホルモン代表のセロトニンや、元気印のドーパミンを分解する酵素がMAO酵素です。この、MAO酵素の合成に銅が使われ、この酵素がたくさん作られるとたくさん仕事(セロトニンやドーパミンを分解)します。その結果、セロトニン減少による幸せ感低下、ドーパミン減少により、やる気・元気レベル低下。そして、ドーパミンが分解されると、めそめそホルモン ノルアドレナリン・いらいらホルモン アドレナリンに変化するためです。
*1 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17317521/
*2 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12893514/
3.銅と不妊の関係
血清銅の割合が高いと着床率に影響するという不妊治療医の論文*3があります。また、これまでにIUDと呼ばれる子宮内避妊具が子宮内膜の遺伝子発現に変化を及ぼすことが実証されてきました。IUDは一般的に銅で作られています。Jose P Carrascosa らは銅自体が子宮内膜間質細胞に与える実験をし子宮内膜症に関連する19の遺伝子や、その他婦人科疾患に関連する他の遺伝子発現に変化をもたらしたと示しています*4。
*3 https://bmcresnotes.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13104-017-2708-4
*4 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28982293/
4.銅との付き合い方
銅は極端に欠乏した場合、銅欠乏性の貧血などになりますが、遺伝性の吸収不全や難治性の下痢症などの特別な場合で、日常の食生活において欠乏することはほとんどありません。また銅は亜鉛とのバランスがとても重要で、銅と亜鉛はブラザーミネラルとも呼ばれます。銅と亜鉛は拮抗する(お互いに効果を打ち消しあう、足を引っ張り合う)性質があります。なので、血液中に亜鉛が多くあると銅が吸収されにくく、銅が多くあれば亜鉛の吸収が抑制されます。理想のバランスは銅より亜鉛が少し多いほうが理想のバランスと言われています。
多く含まれる食品▷多くの食品に含まれているが特に、牡蠣・するめ・魚介類・レバー・ナッツ・大豆・ココア・チョコレートなど
亜鉛の多く含まれる食品を積極的にとり、銅が多いチョコレートやカカオ類を控えるのが手っ取り早いでしょう。
これらの情報は医学的な診断をするものではありません。ヒトの身体はそれぞれ違い、一概に言えないことがほとんどです。一つの情報としてとらえていただき、ご自身や大切なかたのさらなる健康のためにご活用いただけたらうれしいです。